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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(み)8号 決定

主文

本件申立を棄却する。

理由

弁護人松島政義の申立理由について。

高等裁判所がした第二審の判決に対しては、刑訴四〇五条に掲げる事由があることを理由とするときに限って上告の申立ができるのであるが、本件の上告において弁護人は被告人の自白を唯一の証拠としていることが、憲法三八条三項に違反したものであることを理由として上告したものであることは上告趣意書によって明かであるから、当裁判所としては、右の点に関する憲法上の判断を下し、上告申立の理由の当否を判定しなければならない次第である。而して当該判決裁判所の公判廷における被告人の自白が憲法三八条三項にいわゆる「本人の自白」に該当しないことは当裁判所の判例とするところであり、刑訴法施行後においても刑訴三一九条二項の規定を理由として右判例を変更する必要のないことも既に当裁判所の判例としているところであるから、当該裁判所の公判廷の自白を証拠として採用している本件においては、第一審判決は勿論これを是認した第二審判決にも何等憲法三八条三項違反の廉なく、当裁判所のした判決が右の趣旨において論旨を排斥したものであることは判文上明白である。また本件第一審判決は被告人に対する判示犯罪事実を被告人の第一審公判廷の自白及盗難届書、司法警察員並びに検察官に対する各供述調書(自白)を綜合してこれを認定しているのであるが、当裁判所の多数意見は右盗難届書をもって被告人の自白を補強し得るものであると判断しているのであって、従って刑訴三一九条二項の規定の違反もないから、刑訴四一一条を適用すべき事由は認められないと判示しているのである。それゆえに判決の内容には何等の誤りも認められない。

よって刑訴四一七条一項に従い小谷裁判官を除く他の裁判官の意見で主文のとおり決定する。小谷裁判官の反対意見は本件判決記載のとおりである。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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